第二部:『ツァラトゥストラ』を読む ― 生の火を灯す危険な思想

ツァラトゥストラ ♪TikTok

「神は死んだ」

この言葉を聞いたことがある人は多いでしょう。

しかしこれは単なる挑発的な言葉ではなく、

あなたの人生を根底から揺るがす宣告です。

今回はこの言葉で知られる

ニーチェの代表作『ツァラトゥストラはこう語った』から、

 その血も凍るような思想の真髄をご紹介します。

 

警告:ニーチェは劇薬です。厳しい考えも飛び出てきます。
それでもニーチェは現代の私たちにこそ
伝えようとしてくれています。

まさに2章でそれが分かります。

 

目次

『ツァラトゥストラはこう語った』とは

ニーチェが人生どん底の時期に書いた作品です。

30歳前に大学教授の座を追われ、慢性的な頭痛に悩まされ、

恋人にも振られるという三重苦のなかで生み出されました。

彼はこの苦しみを
「私の思想を孵化させる卵の殻」と呼びました。

 

出版当初は全く売れませんでしたが、

後に彼の代表作として世界的な評価を得ることになります。

 

物語の主人公「ツァラトゥストラ」はニーチェの分身です。

山で10年間の孤独な思索を経たツァラトゥストラが、

その知恵を人々と分かち合うために

町に降りてくるところから物語は始まります。

ニーチェの人生をより詳しく知りたい方は、

こちらから↓

「神は死んだ」の本当の意味

私はかつて、酔っぱらって、
大学の飲み会で「人生の意味」について語り、

友達から
「そんな青臭いことを考えるな」
と一蹴されたことがあります。

その時、私は「神は死んだ」という言葉の真意を痛感しました。

 

ニーチェの「神は死んだ」という言葉は、

単に宗教を否定しているわけではありません。

彼が見抜いていたのは、

科学の発展とともに「絶対的な価値基準が崩壊した」

という恐るべき現実です。

 

かつてヨーロッパでは、

キリスト教の教えが「正しい生き方」の基準でした。

しかし科学の発達により、
宗教的な説明では満足できなくなった人々は、

何を信じ、何を価値とすべきか分からなくなる。

ニーチェはこの混迷状態を「ニヒリズム」(虚無主義)と呼びました。

 

私の物語るのは、次の2世紀の歴史である。

私は来るべきものを、すなわちニヒリズムの到来を書き記す

著書で、そんなことを言いました。
ニーチェが言う次2世紀とは、20世紀、21世紀のことです。

この予言はその後の20世紀における
世界大戦や全体主義の台頭という形で
恐ろしいほど的中しました。

そして21世紀の今、あなたは何を基準に生きていますか?

SNSの「いいね」?会社での評価?親の期待?

絶対的なものを持たない私たちは、

ニヒリズムに陥っていると思いませんか?

ニーチェ画像

末人という”生ける屍”の正体

「みんなと同じ意見で批判を避けたい」

「変化より現状維持が安心」

― そんな思考が蔓延る時代に、

ニーチェは問います。

「あなたは本当に生きているのか?」

 

ニーチェはこのような生き方を選ぶ人を
「末人(まつじん)」と呼び、

容赦なく糾弾しました。

末人とは何か?

それは挑戦も成長も求めず、

ただ快適さと安心だけを追求する生ける屍のことです。

 

私自身、将来は大成功とかはいいから、

親しい人とゆったり仲良く生きたい。

とりあえず安定を求めて、無難に生きれればいいな

と思ってました。

私はまさに「末人」そのものでした。

 

現代の末人の特徴をいくつか挙げてみましょう:
身に覚えがあるのでは?

  • 「みんなと同じ意見を言っておけば批判されない」と本音を隠す
  • 「リスクを取るくらいなら現状維持でいい」と変化を恐れる
  • 「批判されるくらいなら、何もしないほうがいい」と創造を放棄する

 

末人が陥る最大の罠は「無への意志」です。

それは
「何も望まない」
「何も変えたくない」
という消極的な生き方。

生物としては生きていても、精神的には既に死んでいる状態です。

あなたは本当に「生きている」と言えるでしょうか?

それとも単に「死んでいない」だけではありませんか?

ルサンチマン―私たちの中の「卑劣な復讐心」

「どうして彼だけ評価されるんだろう」

「あの時ああしていれば、今頃は…」

 

ニーチェはこのような心の状態を「ルサンチマン」

(フランス語で「恨み」の意)と呼び、

それを「弱者の毒」と断じました。

 

ルサンチマンとは何か?

それは簡単に言えば、

自分の無力感を他者への憎しみに
変換する心理メカニズムです。

SNSの裏アカウントで吐き出すような

「見えない恨み日記」が、

あなたの心の奥底で日々更新されていないでしょうか?

例えば:

  • 同期の昇進を祝福しながらも「彼は上司にゴマをすっただけ」と心の中でつぶやく
  • SNSで友人の旅行写真を「いいね」しながら「親のお金で遊んでるだけ」と思う
  • 成功者を「運がよかっただけ」「裏でズルをしている」と決めつける

 

これらはすべて、
私たちの中の卑劣な復讐心の現れです。

 

ルサンチマンの正体は、

「自分ではどうにもできない現実」への無力感です。

この感情に支配されると、

成功者を「悪い奴」と見なし、

自分の弱さを「美徳」と言い換えるようになります。

「あいつは欲張りだから成功した。僕は誠実だから報われないんだ」

という思考パターンは、

実は負け犬の遠吠えにすぎません。

まさに成功者が目立てば叩かれる

この日本はルサンチマンが蔓延ってます。

ではどんな人物を目指していくのかニーチェは

提示してくれています。

 

5. 超人への道:三段階の変容

ルサンチマンや末人に陥らず、どう生きていくべきなのか。

ニーチェは、苦悩を受け止めて創造的に生きること

「超人」を生み出すことが歴史の最終目標と言いました。

 

「超人(Übermensch)」とは、

明確に定義された概念ではありませんが、

他者の価値観に左右されることなく、

自らの人生を創造的に生きる人間像と理解できます。

それは完璧無欠な存在ではなく、

むしろ自分の不完全さをそのまま引き受け、

それでもなお前進しようとする強靭な精神を持った人間です。

 

超人への道をニーチェは3段階あると言います。

 

第一段階:ラクダ―「重荷を背負う者」

最初の段階は、

社会の規範や期待を黙々と背負って生きる状態です。

会社の規則に従い、家族の期待に応え、

周囲に迷惑をかけないよう気を遣う。

学校でカーストの高い人の意見を

ただ肯定する。

—多くの人はこの「ラクダ」の段階で一生を終えます。

 

ラクダは重荷を背負う力はありますが、

その荷物が本当に自分のものかどうかを

問うことはありません。

 

第二段階:獅子―「ノーと言う者」

あるとき、ラクダは気づきます。

「なぜ他人の価値観に従って生きなければならないのか?」
と。

ここから始まるのが「獅子」の段階です。

獅子は既存の価値観に「ノー!」と叫び、

自分の人生の主導権を取り戻そうとします。

例えば、「会社の評価なんて気にしない!」

と転職を決意するサラリーマン。

「親の期待より自分の情熱を優先する」

と決めた学生。

これらは獅子への変容です。

しかし獅子には一つの限界があります。

それは否定する力は持っていても、

新たに創造する力はまだ十分ではないということです。

 

第三段階:幼子―「創り出す者」

最終段階は「幼子」の精神です。

子どもは過去にとらわれず、

未来を恐れることもなく、

今この瞬間を全身で生きています。

好奇心と遊び心に満ち、

自分なりの世界を創造していく

—それが「幼子」の姿です。

 

例えば:

  • 周囲の評価を気にせず自分の情熱に従ってスタートアップを立ち上げる起業家
  • 他人の目を気にせず自分だけの表現スタイルを見つけたアーティスト
  • 「常識」や「当たり前」を疑い、自分だけの価値基準を創造する哲学者

幼子は「それが正しいから」ではなく、

「それが自分の喜びだから」という理由で行動します。

これこそ、ニーチェが理想とした「超人」への道なのです。

あなたはまだ「ラクダ」のまま、

人生という砂漠をさまよっていませんか?

 

 

6.永遠回帰―人生の全てを引き受けられるか

ここで一つ、思考実験をしてみましょう。

もし同じ人生を、

まったく同じ喜びも痛みも含めて、

永遠に何度でも繰り返さなければならないとしたら、

あなたはそれを望みますか?

 

これがニーチェの提案した「永遠回帰」(永劫回帰)という思想です。

多くの人は
いや、さすがに永遠は嫌だ。
と感じるでしょう。

しかし、ニーチェによれば、

本当に自分の人生を一度でも本気で肯定できる人間なら

この永遠回帰さえも喜んで受け入れるはずだというのです。

 

あなたの人生の最も暗い瞬間さえも、

それが必要だったと思えるかという事です。

少し、目を閉じて考えてみてください。

あなたが永遠回帰を望むのか。

あなたは、自分の人生を“これでよかった”と、

永遠に繰り返したいと思えるでしょうか?

 

終わりに

ニーチェは、
現代人が無自覚に生きる”生ける屍”の状態に警鐘を鳴らします。

「神は死んだ」──それは信仰の喪失ではなく、
絶対的な価値が崩れ、
人生の意味を自分で創り出さねばならなくなった
ニヒリズムの時代

快適さに安住する「末人」
他人を恨む「ルサンチマン」の罠を超えて、

自分の価値観で創造的に生きる「超人」へと変容せよ。

そして問われる最後の覚悟
永遠回帰
──「この人生を永遠に繰り返したいと思えるか?」

 


ツァラトゥストラ
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