「今日、自分に”ありがとう”って言えますか?」
自分を責めることには慣れていても、労うことには不慣れな私たちへ。
多くの人は、この問いに言葉を詰まらせるかもしれません。
自信がないからではありません。
むしろ、過剰なほどに他人の目を意識して生きているからこそ、
自分を「好き」と言うことが、どこか気恥ずかしく、あるいは利己的にさえ感じられるのです。
この記事で分かること
ハーバード大学 75年間の研究が示した真実
それは、いったい何が人を本当に幸福にするのか、を探る壮大な旅でした。
科学者たちが辿り着いたシンプルな結論は
——「良い人間関係がすべてを決める」でした。
まず自分自身との関係を見つめることから始まる
本記事では、この「自分を受け入れることから始まる幸福への道筋」を、
アドラー心理学の視点を通して探っていきます。
幸福は、どこか遠くにある理想ではありません。
それは、あなたがあなた自身とどのように関わるか、
その足元から始まるのですから。
1.なぜ私たちは自分を愛せないのか
「自分を好き」と言えない理由
自分のことを本当に好きだ、
と言える人は、どれほどいるでしょうか。
多くの人が、心のどこかで
「もっとこうだったら」「このままじゃだめだ」と、
自分にダメ出しをしながら生きています。
その背景には、私たちがつい他人の評価に頼ってしまう傾向があります。
誰かに認められたい。褒められたい。良い人だと思われたい。
そんな思いは、一見すると自然で前向きにも見えます。
しかし、そこには見落とされがちな落とし穴があります。
「褒められたい」は本当に幸せか?
アドラー心理学では、「褒める」という行為そのものに注意を促しています。
なぜなら、褒めることはしばしば
「相手をコントロールする手段」として働くからです。
たとえば、「それ、よくできたね」と褒めるとき、
無意識に「よくできないと意味がない」
「他人に認められて初めて価値がある」
というメッセージを添えてしまっていることがあります。
褒められるために頑張るようになると、
行動の主導権が自分から離れ、
誰かの期待に応えるために生きることになります。
そうすると、
「誰かに評価されなければ自分には価値がない」という考えが、
心の奥底に根づいてしまうのです。
完璧主義という自分いじめ
さらに私たちを苦しめるのが、完璧主義の罠です。
「もっとできるはず」「まだ努力が足りない」
――そうやって自分を鼓舞しているつもりが、
いつの間にか「今の自分ではダメだ」という否定の声に変わっていきます。
しかも、他人と比べて落ち込むのが習慣になってしまえば、
自信を取り戻すチャンスはどんどん減っていきます。
現実の自分と理想の自分とのギャップばかりを見ていては、
いくら頑張っても満足できません。
ではどうやったら、ありのままの自分を受け入れられるようになるのでしょうか。
次の章では、「自分を愛するための具体的なステップ」について考えていきます。
2.自分を愛するための具体的方法
では、どうすれば私たちは「自分を愛する」ことができるのでしょうか。
ここでは、アドラー心理学の視点をもとに、誰でも今日から始められる実践的なヒントを紹介します。
完璧な自分ではなく、今の自分を受け入れる
まず大切なのは、
欠点もあるし、完ペキとは言えない自分を認める事です。
理想の100%を追い求めることは悪くないです!
しかし、今の自分を否定し続ける限り、
どれだけ努力しても満たされることはありません。
アドラー心理学では、「60%の自分でも受け入れる」ことが、
自分を愛するための出発点だとされます。
中途半端でも、欠点があっても、「これが今の私」と認める。
そこからようやく、前に進む力が生まれます。
「やりたいこと」を最優先にする
自分を愛するというのは、自己中心的になることではありません。
でも、「他人の期待」ばかりを優先して、
自分の本音を後回しにしていると、少しずつ心はすり減っていきます。
だからこそ、自分が「本当にやりたいこと」に正直になることが必要です。
誰かに認められるためではなく、
自分の中から湧き上がる興味や喜びに従って動くこと。
それが、「私はこれでいい」という感覚を育てる第一歩になります。
やりたい事をやっているときの自分は好きじゃないですか?
ゲームをしているとき、ひとりで旅行してみたり、自分の意志で筋トレをしたり、
そういったやりたい事をやっているときは、自分のこと好きになる瞬間が多くないですか?
自分を愛することは義務であるというのが前回の記事です。自分を愛することは、
大事だし、義務なんです!
自己満足でもいい、「誰かの役に立っている」と思えること
他人の役に立っていると感じたとき、私たちは深い満足感を得ます。
でも、それは「ありがとう」と言われたときだけに限りません。
自分が納得できるかどうか
――それが一番大切なのです。
たとえ誰かに評価されなくても、
「今日は道に落ちていたゴミを拾った」
「SNSで誰かの投稿に温かいコメントをした」
誰にも気づかれなくても、
小さな親切は「自分には価値がある」と教えてくれます。
「私は誰かのために動けた」という手応えがあります。
それは自己満足かもしれません。でも、それでいいのです。
自分なりの貢献感が、自尊心の土台になります。
このように、「自分を愛する」ことは決して特別な才能や努力を必要とするものではありません。
むしろ、日々の小さな意識の積み重ねこそが、自分を大切にする第一歩になるのです。
より深くアドラー心理学を学びたい方へ
ここまで紹介した「自分を受け入れる方法」は、アドラー心理学のほんの入り口に過ぎません。
アドラー心理学には、人間関係の悩みを根本から解決し、真の自立と幸福を手に入れるための体系的な知恵が詰まっています。
こんな方におすすめ:
- 自己受容をもっと深く実践したい
- 人間関係の悩みを根本から解決したい
- 他人の期待に振り回されない生き方を身につけたい
- 「課題の分離」など、具体的なテクニックを学びたい
3.自分を愛することで生まれる、人間関係の変化
「自分を愛する」ということは、自己満足で完結する行為ではありません。
それは静かに、しかし確実に、他者との関係性を変えていく力を持っています。
ここからは、自分へのまなざしが変わったときに、人との関わり方がどう変わるのかを見ていきましょう。
愛されるのではなく、「愛する」人になる
他人から愛されたいと願うのは、人間として自然なことです。
しかし、その願いにとらわれていると、人との関係はいつも“見返り”を前提としたものになってしまいます。
本当に成熟した愛とは、自分から愛することを選ぶところから始まります。
たとえ返ってこなくても、たとえ傷つく可能性があっても、
「この人を信じてみよう」「この人に優しさを向けよう」と思える力。
これは「愛するということ」を書いたエーリッヒ・フロムが述べたように、
“愛とは技術であり、成熟しないと愛を与えることは出来ない”
という考えにも通じます。
ーモテたい願望の裏側にある弱さ
【Coffee Break】愛を受け入れられなかったら?私たちは、愛することを恐れているとアドラーは言います。
モテたいという意識は、拒絶されることを恐れている表れです。
愛を拒絶されるかどうかは、私たちでは決められません。
ここに関して、アドラーは、考えても仕方ないと言います。
アドラー心理学の「課題の分離」という考え方では、
「自分にできること」と「相手がどう受け取るか」は
切り離して考えるべきだとされます。
相手を愛するのは私たちの課題であり、
その愛を受け入れるかは相手の課題です。
私の好きな哲学者エピクテトスの考えを借りるなら、
自分でコントロールできることに集中して、
相手のことは相手次第と割り切ることです。
拒絶されたとしても、それはあなたのせいではない。
貴方が愛するという課題を達した証拠である。
相手をありのまま受け入れる余裕
自分の弱さや不完全さを認められるようになると、
不思議と他人の欠点にも寛容になります。
「なんでこんなこともできないの?」という苛立ちが、
「人間だもの、そんな日もあるよね」へと変わるのです。
相手を操作しようとするのではなく、そのままの姿を受け止めようとする
――それが本当の意味での“尊敬”であり、“対話”の始まりです。
自分を愛せるようになると、
私たちはようやく、「相手を大切にする力」を手にします。
それは、自己犠牲でも、依存でもない。
成熟した愛と、信頼に基づくつながり――
そのすべては、“自分を認めること”から始まるのです。
4.真の幸せへの道筋
ここまでの話を、ひとことで言い表すなら――
「幸せは、自分を愛することから始まる」ということです。
私たちは、誰かに愛されることを求めて生きています。
けれどその前に、自分自身を受け入れ、尊重し、大切にできているでしょうか。
自己否定のままでは、他人の優しさも信じられず、
他人の欠点ばかりが気になり、
気づけば孤独の中に閉じこもってしまいます。
反対に、自分を認められる人は、
人の温かさを素直に受け取り、
人の弱さを受け止める余裕を持てるようになります。
幸せの連鎖はこうして始まる
役に立つとは、なにも大きなことでなくて構いません。
隣にいる人に声をかけること。
相手の話をじっと聴いてあげること。
小さな行動が、誰かの心をあたため、自分の存在を肯定してくれます。
今日から始められる「小さな自己受容」
今すぐに、完璧な自分にならなくてもいい。
「今日の私は60点。でも、そんな自分も悪くない」と思えたら、それは立派な第一歩です。
他人の期待に振り回されず、少しだけ自分の気持ちを優先してみる。
今日の食事を、自分の好きなもので満たしてみる。
たったそれだけでも、自己受容のスイッチは静かに入ります。
人生は、他人との関係で決まる――
けれど、その前提にあるのは、「自分との関係」です。
自分を愛せる人が、人を愛せる。
人を愛せる人が、幸せをつかむ。
そんな当たり前のようで難しい道を、
今日から、一歩ずつ踏み出してみませんか?
完ペキと言えない自分を愛することには勇気がいります。でも、自分の欠点含めて
愛せたら最高じゃないですか?